ICTSC2024 本戦 問題解説: [QUO] 何も出てこない
問題文
概要
黒羽くんはジャンクの新しいネットワーク機器を購入し、ウキウキで開封した。
黒羽くんは興奮冷めやらぬ様子で「早速触ってみるか」と、コンソールを繋いで電源を入れた。
「あれ? 電源は入っていそうなのに画面に何も出てこない…… 壊れてるのかな?」
どうやら、起動はしたもののコンソールに何も表示されないようだ。
黒羽くんは不良品を疑っているが、ジャンクのため不良品返品もできない。
前の人の設定が残っている影響かもしれない。
なんとかして黒羽くんがコンソールを触れるようにしてほしい。
黒羽くんは、WindowsとMacOSのPCを1台ずつ所有している。
普段、Windowsではインストールして設定を変更していないTera Termを、MacOSではscreenコマンドを使用してコンソールを触っている。
黒羽くんのトラブルはこの環境で発生したらしい。
また、黒羽くんはコンソールのトラブルにうんざりしているので、SSH経由でログインできるようにしてあげよう。
前提条件
- C841M-2のみが関連するトラブル
制約
- トラブルの解決のためにTelnetやSSHなどのリモートログインをしてはならない
終了状態が達成されているかの確認のためにリモートログインすることは認められる
- 機器の初期化を行ってはならない
初期状態
- コンソールケーブルを接続し、以下の接続をした上で、操作しても画面に何も出力されない
- Windows: インストール直後のTera Termで、「新しい接続」から「シリアル」とCOMポートを選択
- COMポートはコンソールケーブルのデバイス
- MacOS/Linux:
screen /dev/tty.*****
tty.*****
はコンソールケーブルのデバイス
- Windows: インストール直後のTera Termで、「新しい接続」から「シリアル」とCOMポートを選択
機器のSSH機能は有効だが、user
ユーザーが存在せず、SSHログインできない
終了状態
- コンソールケーブルを接続し、以下の接続をした上で、
running-config
を確認できる- Windows: インストール直後のTera Termで、「新しい接続」から「シリアル」とCOMポートを選択
- COMポートはコンソールケーブルのデバイス
- MacOS/Linux:
screen /dev/tty.*****
tty.*****
はコンソールケーブルのデバイス
- 追記: プロファイルの変更やオプションの追加をせずにこれらが行える
- Windows: インストール直後のTera Termで、「新しい接続」から「シリアル」とCOMポートを選択
user
ユーザーと接続情報に記載のパスワードで、SSHログインできる
接続情報
ホスト名 | IPアドレス | ユーザ | パスワード |
---|---|---|---|
C841-2 (Console) | - | - | ictsc2024 |
解説
この問題では、コンソールケーブルを機器に接続しても、入力への反応がなく、出力が確認できないというトラブルが発生していました。
Teratermや、screenコマンドなど、コンソール接続を行う多くのソフトウェアでは、デフォルトでボーレート 9600bpsで接続を行います。
多くのネットワーク機器はデフォルトではボーレートが9600bpsに設定されているため、問題は発生しません。
しかし、この環境では機器のボーレートが115200bpsに設定されているため、Teratermやscreenコマンドのデフォルト設定である9600bpsで接続しても入出力が行えないというものです。
トラブルの解決は、以下の手順で操作する必要があります。
- 115200bpsでコンソール接続する
- 以下の設定を行う
-
line console 0 speed 9600
なお、 speed
のデフォルトの設定値は9600なため、 no speed
のように入力しても、同等の設定が可能です。
採点基準
- 機器のボーレートを9600bpsに変更した
- 100点
100点満点
講評
この問題は満点が100点に設定されているように、低めの難易度の問題として出題しました。
実際に、15チーム中14チームが正答、正答出なかったチームも115200bpsでコンソール接続することには成功しています。
解説にて「多くのネットワーク機器はデフォルトではボーレートが9600bpsに設定されている」と記載しましたが、全ての機器がそうであるわけではありません。
ベンダーや、機器によっては異なるボーレートがデフォルト設定となっている場合もあります。
この場合、115200bpsが用いられることが多いようです。
実際に、今大会でバックボーンに使用したNCS-55A1は、デフォルトでボーレートが115200bpsに設定されています。
このため、運営メンバーも設定作業中に「あれ?」と言うことが何度かありました。
逸般の誤家庭の皆さんは様々なネットワーク機器を触ることになると思いますが、コンソールで反応がなかったときはこの問題を思い出して、ボーレートの変更を試してみると、もしかすると解決するかもしれません。