ICTSC2024 本戦 問題解説: [BKT] リンクの迷宮

問題文

概要

ICTSC2024 本戦の手元問題で使用するスイッチを設定していたところ、原因不明でリンク速度が 100Mbps になってしまった。
原因を特定し、参加者に快適なネットワーク環境を提供してください。

前提条件

使用するポートは以下の通り

  • C841-1
    • Gi0/3
  • Nexus93108
    • Eth1/5

制約

  • 使用するスイッチのポートを変更してはいけない

初期状態

  • C841-1 Gi0/3 と Nexus93108 Eth1/5 間が 100Mbps でリンクアップする

終了状態

  • C841-1 Gi0/3 と Nexus93108 Eth1/5 間が 1000Mbps でリンクアップする
    • 本問題の原因を特定し再発防止策を講じるために、この問題が再現できるよう詳細な報告書を作成すること

解説

この問題は、以下の 2 つのトラブルを解決することで正解となります。

  • スイッチ間のリンクスピードの誤設定
  • LAN ケーブルの結線ミス

解決方法

スイッチ間のリンクスピードの誤設定

スイッチ間で 100M でリンクアップしている原因は、ポートの速度設定の不一致(オートネゴシエーションと固定速度設定のミスマッチ)です。
以下のように Nexus93108 でインタフェースの状態を確認することができます。

n9k# show interface eth1/5 status

--------------------------------------------------------------------------------
Port          Name               Status    Vlan      Duplex  Speed   Type
--------------------------------------------------------------------------------
Eth1/5        BKT                connected routed    full    100     10g

対向機器 (C841M-1) の設定を確認すると、速度設定が異なっていることが分かります。

! C841M-1
interface Gi0/3
  speed auto

! Nexus93108
interface Eth1/5
 speed 100

この不一致を解消するには、両方のスイッチで同じ速度設定を行います。正解となる設定は以下のいずれかです。

  • 双方を speed auto に設定してオートネゴシエーションを有効にする
  • 双方を speed 1000 に設定して固定速度にする

speed auto に統一する場合、Nexus93108 で設定を行います。

en
conf t
interface Eth1/5
  speed auto
  ! もしくは
  ! no speed

speed 1000 に統一する場合、Nexus93108 と C841M-1 で設定を行います。

! Nexus93108
en
conf t
interface Eth1/5
  speed 1000

! C841M-1
en
conf t
interface Gi0/3
  speed 1000

LAN ケーブルの結線ミス

スイッチのリンクスピード設定を修正すると、リンクが確立しなくなります。
これは、LAN ケーブルの結線ミスが原因です。
今回、意図的に誤結線の UTP ストレートケーブルを使用しました。以下の表のように、配線が誤っていることが分かります。

ピンアサイン Pin 1 Pin 2 Pin 3 Pin 4 Pin 5 Pin 6 Pin 7 Pin 8
誤結線 (初期状態) 橙白 緑白 青白 茶白
正解 (T568B) 橙白 緑白 青白 茶白

今回使用したケーブルは、片側が正しい結線、もう片側が誤結線になっていました。
そのため、正しく結線された UTP ケーブルを作成することで、終了状態である 1000Mbps でリンクを確立させることができます。

採点基準

  • インタフェースの speed を正しく設定する:45 点 (30%)
  • ツイストペアが正しい UTP ケーブルを作成する:90 点 (60%)
  • LAN ケーブルのピンアサインについて触れられている:15 点 (10%)

講評

本問題では、会場のかしめコーナーで LAN ケーブルを作成する必要がありました。
周囲のチームが LAN ケーブルを作成していたり、かしめコーナーが設置されていたことから、何となく気づいた方もいたかもしれません。
物理問題ならではのトラブルも含め、楽しんでいただけたなら幸いです。

また、本問題を作成するにあたり、以下の LAN ケーブル結線パターンとさまざまなリンクスピードで検証を行いました。

No ピンアサイン Pin 1 Pin 2 Pin 3 Pin 4 Pin 5 Pin 6 Pin 7 Pin 8
A 正解 (T568B) 橙白 緑白 青白 茶白
B 誤結線 (初期状態) 橙白 緑白 青白 茶白
C 誤結線 (ツイストペア混ぜ x2) 橙白 緑白 茶白 青白
D 誤結線 (切断 1) 橙白 緑白 切断 青白 切断
E 誤結線 (切断 2) 橙白 緑白 青白 切断 切断

検証結果は省略しますが、気になる方は是非ご自身で試してみて下さい!